富山地方裁判所 昭和26年(行モ)1号 決定
申請人 杉本儀四郎 外五十五名
被申請人 高岡市
一、主 文
本件申立を却下する。
申立費用は申立人等の負担とする。
二、理 由
本件申立の要旨は別紙第二目録記載の通りである、と謂うにある。
先ず本件申立書には「仮処分」なる文詞を用いているが申請の全趣旨から判断すれば本件は行政事件訴訟特例法第十条の裁判を求めていることが明らかである。
よつて案ずるに同条の執行停止を求めるには処分の執行によつて償うことのできない損害が生ずるおそれがあり且つこれを避けるため緊急の必要があると認められる場合に限ることは同法条の解釈上明らかなところ本件に於ては以上の点について何等の疎明がなく然も被申請人指定代理人審尋の結果によれば本件処分の執行停止をするには公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが窺知できるから本件申立は何れの点よりするも理由のないものといわねばならない。
よつて申立費用の負担につき民事訴訟法第八十九條第九十三條を適用して主文の通り決定する。
(裁判官 渡辺門偉男)
第二目録
申請の趣旨
被申請人は別紙目録地上に存在する物件を撤去する旨の行政代執行を使用権確認並びに占有保全の本案判決確定に至る迄為すべからず。
申請の理由
一、申請人等は海外引揚者、傷痍軍人、戦災未亡人にして共栄マーケツト連合会を結成し、何れもその組合員で露店営業の許可を受け目下営業を継続しているものであるところ高岡市内を貫通している庄方用水及び米島線出合用水並びに何野開発地子出合用水の護岸の中その所有管理に係る別紙第三目録記載の土地をその管理者より昭和二十一年八月十四日以降現在に至る迄毎年補償料を支払つて借受け使用占有して居り、又高岡市よりは昭和二十三年三月十二日付にて別紙第三目録記載の道路の占用許可を受け、その後昭和二十六年三月十三日道路占有物件撤去方催告書受領に至る迄使用料を支払いその使用を許可承認を受けて現在迄使用して来たものであるが、被申請人は昭和二十六年三月十三日申請人等に対し道路占有権は昭和二十三年六月三十日に期間満了したとの理由を以て不法にも被申請人の何等権利を有しない前記用水の堤防上の物件迄も昭和二十六年四月二日、三日に行政代執行法第三条第二項の規定に基き之と道路上の物件と共に撤去を執行せんと企て居るものにして右地上の建物は一体を為して形成し居り、その破壊撤去を為されんか申請人等は憲法に保障する基本的人権である生存権、居住権を失いたちまち其の日の生活に窮する悲惨な境遇に立ち至ること火を見るよりも明らかにして又営業不能に因る著しい損害を蒙る結果に陥るものである。
二、申請人等は之が為め目下被申請人の昭和二十六年三月十九日付高土発第二十七号戒告書及び同月二十六日付高土発第三十二号代執行令書による行政代執行法に基く戒告並に代執行に対しては行政代執行法第七条に基き異議を申立て居るも未だ被申請人よりは何等の意思表示にも接していない。
三、然るに被申請人は来る四月二、三両日には必ず代執行を為さんとして着々準備を為して居るものであるから申請人等が訴願並びに本件土地の使用権確認並びに占有保全の本案訴訟を御庁に提起せんとしているが、代執行を為されんか申請人等は回復すべからざる多大の損害を蒙るものにして而も代執行の期日は間近に迫つて居り甚しく急迫して居るものであり、之に反し被申請人は左程の損害を蒙るものであるから前記申請の趣旨記載の通りの命令を求める為め本申請に及ぶ。